免疫・消化器・アレルギーグループ

グループ概要

免疫・消化器・アレルギーグループは、喘息、食物アレルギーといったアレルギー疾患、若年性関節リウマチ、SLE等の小児リウマチ/膠原病疾患に加えて、稀少疾患である原発性免疫不全症や自己炎症性疾患等の遺伝性疾患に至るまで、小児免疫が関与する幅広い疾患の診療・研究・教育を実施し国内外へ積極的に情報を発信してきています。
 特に、原発性免疫不全症や自己炎症性疾患の診断・治療に関しては、分子生物学的製剤による特異治療、集学的治療のみならず造血細胞移植による根治療法も実施し、高度医療施設として機能しています。加えて、遺伝子検査が保険適応される10年以上以前より遺伝子検査や分子生物学的診断を実施し貢献してきた長年の実績もあり※※※、PIDJ(現在はver..2)等を介して全国から寄せられる相談に対する診療サポート体制をJSIADと協力しつつ現在も担い続けています。原発性免疫不全症候群研究班の関西唯一の分担研究施設として、また自己炎症性疾患研究班でも分担施設として位置付けられ、特に、自己炎症性疾患,家族性血球貪食性リンパ組織球症、自然免疫不全症の診断・研究に関しては本邦の中心的施設となっています。
さらに、炎症性腸疾患,劇症肝炎等の消化器・肝疾患に対しても、内視鏡専門医を有する小児科医によって上部/下部内視鏡検査・内視鏡的治療が常時実施可能で、また、小児外科や麻酔科とも連携することで肝生検から劇症肝炎、肝移植・小腸移植までも対応が可能であり、日本でも有数の超高度医療を提供しています。

対象疾患/診療内容

以下のようなケースがあれば是非ご相談ください。

家族性血球貪食性リンパ組織球症機能解析

内容 家族性血球貪食性リンパ組織球症で認められる血小板タンパク発現低下、T細胞機能低下、NK細胞機能低下を解析
対象 新生児期・乳児期の血球貪食症候群を示唆する所見、小児期以降の反復する血球貪食症候群
担当者 柴田 洋史(しばた ひろふみ)
k2shiba*kuhp.kyoto-u.ac.jp

ADA2活性/変異機能解析

内 容 ADA2欠損症で認められるADA2活性低下・欠損を解析
対 象 結節性多発動脈炎を示唆する中型血管を主とした小児期血管炎、小児期以降の治療抵抗性/再発性の血管炎症候群、反復する若年性脳梗塞
担当者 仁平 寛士(にひら ひろし)
nihira_hiroshi*kurume-u.ac.jp

インターフェロンシグネチャー解析

内容 SLE等の自己免疫疾患を含め、インターフェロンの活性化が主病態である場合に認められるインターフェロン関連遺伝子発現亢進を解析
対象 SLE等の自己免疫疾患,既存の疾患に該当せず熱源が明らかでない持続する不明熱
担当者 井澤 和司(いざわ かずし)
kizawa*kuhp.kyoto-u.ac.jp

その他解析

内容 リンパ球サブセット解析、MEFV/NLRP3/NLRC4/CDC42/XIAP変異機能解析、IRAK4-TNFα産生能解析、全エクソン解析/全ゲノム解析 etc.
対象 詳細は担当者に確認ください
担当者 井澤 和司(いざわ かずし)
kizawa*kuhp.kyoto-u.ac.jp

 
メールをいただく場合は「*」を「@」に変えてお送りください。
上記以外にも随時相談を受け付けております。判断に迷う場合はグループ代表者までご連絡ください。

研究内容

遺伝性自己炎症疾患は、先天性免疫異常症(Inborn Errors of Immunity: IEI)の1分類で、主には自然免疫の活性化によって引き起こされる過剰炎症を主病態とする疾患群です。近年では、よりその境界はあいまいとなり、自然免疫系の異常に留まらず獲得免疫系の異常も併存することが示唆される疾患も知られ、現在でも年々新たな疾患が報告されています。
当グループは、遺伝性自己炎症疾患の中でもインフラマソームと呼ばれる細胞内免疫機構の異常に起因する疾患を中心に長年研究を続けており、全エクソン解析・全ゲノム解析による広く先天性免疫異常症の新規原因遺伝子の同定・臨床情報の報告に加え、患者検体、iPS細胞を用いた機能解析からマルチオミックス解析に及ぶ幅広い基礎研究を通して病態解明を行っています。

最新・過去の診療実績[PDF:139.7KB]

研究実績[PDF:149.1KB]

遺伝性自己炎症性疾患の病態解明

  • CDC42 C末端病におけるパイリンインフラマソーム関与の発見

CDC42-C末端病は、CDC42遺伝子の突然変異によって生じる疾患として2020年に報告された、常染色体優性遺伝性疾患です。本邦2症例のうち当院で1例を診断・診療し、患者血液中で IL-1βや IL-18 が著明に上昇していたことからインフラマソーム形成を介した自己炎症性疾患であることを疑い、パイリン(pyrin)インフラマソームによる過剰炎症が患者における主たる炎症経路であることを世界で初めて明らかにしました。
 

主な成果発表

Masahiko-Isa Nishitani※, Kojiro Mukai※, et al. Trapping of CDC42 C-terminal variants in the Golgi drives pyrin inflammasome hyperactivation. ※共同筆頭著者
Journal of Experimental Medicine, 2022. Impact Factor=17.6.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35482294/

  • ADA2欠損症におけるインターフェロン(IFN)-γ及びSTAT1過剰亢進の関与の発見

ADA2欠損症は、ADA2遺伝子の機能喪失型変異によって生じる疾患として2014年に報告された常染色体劣性遺伝性疾患です。幼少期から繰り返す発熱、脳梗塞・脳出血といった症状が出現し、重い後遺症を遺すことがあります。日本では2016年から2019年の間に、当科加療中の4名を含む8名のADA2欠損症患者が診断され、京都大学が中心となり疾患に関する情報を集積しています。患者血液サンプルを用いたmRNA・タンパクの網羅的な発現解析結果を比較検討することで、ADA2欠損症患者ではIFN-γ、STAT1が特異的・持続的に発現亢進・活性化していることを世界で初めて明らかにしました。
 

主な成果発表

Hiroshi Nihira, et al. Detailed Analysis of Japanese Patients with Adenosine Deaminase 2 Deficiency Reveals Characteristic Elevation of Type II Interferon Signature and STAT1 Hyperactivation.
The Journal of Allergy and Clinical Immunology, 2021. Impact Factor=14.3.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33529688/
 

関連する研究費

日本医療研究開発機構(AMED) 難治性疾患実用化研究事業
「Adenosine Deaminase 2(ADA2)欠損症の病態解明と治療薬開発の基盤構築」

小児免疫疾患の新規診断法開発

  • 家族性地中海熱におけるMEFV変異機能解析法開発

インフラマソームは、侵入した特定の病原体や毒素を検出し、免疫系を活性化してそれらを排除する働きを持つ複合体です。パイリン(pyrin)インフラマソームはその1種で、パイリンはMEFVという遺伝子から作られ、MEFV遺伝子の変異によりパイリンインフラマソームの過剰活性化が生じると家族性地中海熱という疾患が引き起こされます。MEFV遺伝子で生じた変異が実際に過剰活性化の原因となっているかどうかを迅速に解析する方法を新規に開発しました。

主な成果発表

Yoshitaka Honda※, Yukako Maeda※, et al. Rapid flow cytometry-based assay for the functional classification of MEFV variants. ※共同筆頭著者
The Journal of Clinical Immunology, 2021. Impact Factor=8.5.
https://doi.org/10.1007/s10875-021-01021-7
 

関連する研究費

日本学術振興会科学研究費助成事業 基盤C
「患者検体・iPS細胞を用いた様々なMEFV変異による自己炎症発症機序の解明」

  • 小児炎症性腸疾患における潰瘍性大腸炎特異的自己抗体

潰瘍性大腸炎はクローン病やベーチェット病等と並ぶ炎症性腸疾患の1種で、主に大腸の潰瘍形成を特徴とし近年患者数が世界的に増加しています。発症には何らかの免疫異常が関連すると考えられる一方で、病態は不明なままでした。診断は症状や大腸内視鏡所見等から総合的に判断されますが、特に小児炎症性腸疾患は、専門家でも所見判断が難しくかつ内視鏡検査自体が麻酔を必要とするため一般的に実施できない等、診断・治療を難しくしています。京都大学では潰瘍性大腸炎に極めて特異性の高い自己抗体、抗インテグリンαvβ6抗体を発見し、小児潰瘍性大腸炎の診断においても感度94.7%、特異度81.3%と診断に優れた力を発揮することを世界で初めて明らかにしました。

主な成果発表

Yuya Muramoto, Hiroshi Nihira, Masahiko Shiokawa※※, Kazushi Izawa※※, Eitaro Hiejima※※, Hiroshi Seno. Anti-integrin avb6 antibody as a diagnostic marker for pediatric patients with ulcerative colitis.
※共同筆頭著者
※※共同責任著者
Gastroenterology, 2022. Impact Factor=33.9.
https://doi.org/10.1053/j.gastro.2022.06.026

自己炎症性疾患の全国調査解析

  • クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)全国調査結果

クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)は、NLRP3遺伝子変異によってNLRP3インフラマソームの活性化・過剰炎症が生じ引き起こされる遺伝性自己炎症疾患の1種です。大きく軽症、中等症、重症の症状段階があり、それぞれ家族性寒冷蕁麻疹、Muckle-Wells症候群、CINCA症候群と呼ばれます。CAPSは、体細胞モザイクと呼ばれる、体を構成する細胞のわずか数%が変異を持つだけで発症することも知られています。本邦で初めてCAPS患者の全国調査を実施し、合計101人の患者情報を収集することで日本人におけるCAPS患者の特性を明らかにしました。

主な成果発表

Takayuki Miyamoto, et al. Clinical characteristics of cryopyrin-associated periodic syndrome and long-term real-world efficacy and tolerability of canakinumab in Japan: results of a nationwide survey.
Arthritis & Rheumatology, 2024. Impact Factor=15.5.
https://doi.org/10.1002/art.42808
 

関連する研究費

  • 日本学術振興会科学研究費助成事業 若手研究
    「NLRP3、NLRC4疾患関連変異によるカスパーゼ1非依存性細胞死の機序解明」
  • 厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
    「自己炎症性疾患とその類縁疾患の全国診療体制整備、移行医療体制の構築、診療ガイドライン確立に関する研究」

その他

  • T Miyamoto※, Y Honda※, et al. Assessment of type I interferon signatures in undifferentiated inflammatory diseases A Japanese multicenter experience. Front Immunol, 2022. ※共同筆頭著者
  • T Shiba, et al. Functional evaluation of the pathological significance of MEFV variants using induced pluripotent stem cell–derived macrophages. J Aller Clin Immunol, 2019.
  • B Boisson※, Y Honda※, et al. Rescue of recurrent deep intronic mutation underlying cell type–dependent quantitative NEMO deficiency. J Clin Invest, 2019. ※共同筆頭著者
  • H Shibata, et al. Human CTL-based functional analysis shows the reliability of a munc13-4 protein expression assay for FHL3 diagnosis. Blood, 2018.

教育・研修内容

日本アレルギー学会専門医制度教育研修施設
日本リウマチ学会 教育施設
小児リウマチ診療中核施設・診療連携施設
日本免疫不全・自己炎症学会(JSIAD)連携施設

メッセージ

小児免疫疾患は日進月歩の分野で、この10年を見ても、これまで原因が不明とされた疾患でその病態が次々と明らかとなり、当グループもその一端に寄与してきたと自負しています。しかし、新たな分子標的薬の開発・導入が進み患者さんのQOLも格段に向上してきた一方で、未知の病態から生じる免疫障害で苦しむ患者さんは依然多く存在します。そのような状況でも現時点での最高の医療を提供していくために、患者さんの病歴や症状・所見を詳細に把握するのはもちろんのこと、最新の文献・情報を集積し、一般臨床検査のみならず研究室レベルの分子生物学的解析を組み合わせることで、患者さんの病状・病態に即した治療を行うことが肝要と考えております。
臨床ではエビデンスを基本としつつ、エビデンスのない場所で病態に挑み患者さんに寄り添いながら新たなエビデンス創設を目指し、研究でも未知の病態の解明に挑む、そんな仲間を年代問わず募集しています。ご興味のある方は遠慮なくグループ代表者までご連絡ください。