小児科専門医を目指す先生方へ施設群による研修と地域医療

小児科専門医を目指す先生方へ 施設群による研修と地域医療

年次毎の研修計画 [整備基準:16, 25, 31]

日本小児科学会では研修年次毎の達成度(マイルストーン)を定めています(下表)。
小児科専門研修においては広範な領域をローテーションしながら研修するため、研修途中においてはマイルストーンの達成度は専攻医ごとに異なっていて構いませんが、研修修了時点で一定レベルに達していることが望まれます。
「小児科専門医の役割(16項目)」の各項目に関するマイルストーンについては研修マニュアルを参照してください。
研修3年次はチーフレジデントとして専攻医全体のとりまとめ、後輩の指導、研修プログラムへの積極的関与など、責任者としての役割が期待されます。

 1年次  健康な子どもと家族、common disease、小児保健・医療制度の理解
 基本的診療技能(面接、診察、手技),健康診査法の修得
 小児科総合医、育児・健康支援者としての役割を自覚する
 2年次  病児と家族、重症疾患・救急疾患の理解
 診療技能に習熟し、重症疾患・救急疾患に的確に対応できる
 小児科総合医としての実践力を高める、後輩の指導
 3年次
(チーフレジデント)
 高度先進医療、希少難病、障がい児に関する理解
 高度先進医療、希少難病、障がい児に関する技能の修得
 子どもの代弁者、学識者、プロフェッショナルとしての実践
 専攻医とりまとめ、後輩指導、研修プログラムへの積極的関与

研修施設群と研修モデル [整備基準:23-37]

小児科専門研修プログラムは3年間(36か月間)と定められています。
本プログラムにおける研修施設群と、年次毎の研修モデルは下表のとおりです。

研修基幹施設
(責任施設)
専門研修連携施設 関連施設
グループA
関連施設
グループB
京都大学医学部附属病院 静岡県立こども病院
大津赤十字病院
北野病院
大阪赤十字病院
天理よろづ相談所
日赤和歌山医療センター
兵庫県立尼崎総合
 医療センター
倉敷中央病院
神戸市立
 西神戸医療センター
神戸市立医療センター
 中央市民病院
静岡県立総合病院
静岡市立静岡病院
彦根市立病院
公立甲賀病院
高島市民病院
三菱京都病院
宇治徳洲会病院
赤穂市民病院
福井赤十字病院
京都桂病院
日本バプテスト病院
国立病院機構
 京都医療センター
医仁会武田総合病院
洛和会音羽病院
済生会中津病院
滋賀小児保健
 医療センター
国立病院機構南京都病院
国立循環器病
 研究センター病院
専攻医01 1 2 3
専攻医02 1 2 3
専攻医03 1 2 3
専攻医04 1 3 2
専攻医05 1 3 2
専攻医06 2 1 3
専攻医07 2 1 3
専攻医08 3 1 2
専攻医09 3 1 2
専攻医10 3 1 2
専攻医11 3 1 2
各施設の
研修期間
6〜12か月 12〜24か月 6〜18か月
専攻医12 1 2 3
各施設の
研修期間
6〜12か月 12〜18か月 6〜12か月
施設での
研修内容
専門性の高い小児医療を中心として、25領域全般にわたって研修する。 地域の基幹病院として、ほぼ全般にわたる専門性の高い小児医療の研修が可能であるが、大学病院と異なった視点で領域を選択し、研修を行う。全般的な地域医療の研修も可能である。 地域に密着した一般小児診療、救急医療を研修する。 ごく一部の特化した領域(心臓、神経、障害児医療)の研修が可能である。

基幹病院及び連携施設 小児科
年間入院数
小児科
年間外来数
小児科
専門医数
うち
指導医数
京都大学医学部附属病院 1756 16629 26 15
静岡県立こども病院 4699 21146 61 33
大津赤十字病院 2050 19956 15 11
北野病院 3178 32033 11 11
大阪赤十字病院 2761 18581 13 6
日本赤十字社和歌山医療センター 964 13497 11 9
兵庫県立尼崎総合医療センター 2679 33970 20 20
倉敷中央病院 2032 39173 19 14
西神戸医療センター 1454 19375 6 6
神戸市立医療センター中央市民病院 2151 13851 10 9
天理よろづ相談所病院 598 13215 4 3

<領域別の研修目標>

研修領域 研修目標 基幹研修
施設
研修連携施設 その他の
関連施設
診療技能
全般
小児の患者に適切に対応し,特に生命にかかわる疾患や治療可能な疾患を見逃さないために小児に見られる各症候を理解し情報収集と身体診察を通じて病態を推測するとともに,疾患の出現頻度と重症度に応じて的確に診断し,患者・家族の心理過程や苦痛,生活への影響に配慮する能力を身につける.
1. 平易な言葉で患者や家族とコミュニケーションをとる.
2. 症候をめぐる患者と家族の解釈モデルと期待を把握し,適切に対応する.
3. 目と耳と手とを駆使し,診察用具を適切に使用して,基本的な診察を行う.
4. 対診・紹介を通して,医療者間の人間関係を確立する.
5. 地域の医療資源を活用する.
6. 診療録に利用価値の高い診療情報を記載する.
7. 対症療法を適切に実施する.
8. 臨床検査の基本を理解し,適切に選択・実施する.
京都大学
病院
専門研修連携施設
関連施設グループ
A・B
小児保健 子どもが家庭や地域社会の一員として心身の健康を維持・向上させるために,成長発達に影響を与える文化・経済・社会的要因の解明に努め,不都合な環境条件から子どもを保護し,疾病・傷害・中毒の発生を未然に防ぎ,医療・社会福祉資源を活用しつつ子どもや家族を支援する能力を身につける. 同上 同上 同上
成長・発達 子どもの成長・発達に異常をきたす疾患を適切に診断・治療するために,身体・各臓器の成長,精神運動発達,成長と発達に影響する因子を理解し,成長と発達を正しく評価し,患者と家族の心理社会的背景に配慮して指導する能力を身につける. 同上 同上 同上
栄養 小児の栄養改善のために,栄養所要量や栄養生理を熟知し,母乳育児や食育を推進し,家庭や地域,環境に配慮し,適切な栄養指導を行う能力を身につける. 同上 同上 同上
水・電解質 小児の体液生理、電解質、酸塩基平衡の特殊性を理解し、脱水や水・電解質異常の的確な診断と治療を行う能力を身につける。入院患者を担当しながら、全身管理の一環として水・電解質管理を学ぶ。 同上 同上 同上
新生児 新生児の生理,新生児期特有の疾患と病態を理解し,母子早期接触や母乳栄養を推進し,母子の愛着形成を支援するとともに,母体情報,妊娠・分娩経過,系統的な身体診察,注意深い観察に基づいて病態を推測し,侵襲度に配慮して検査や治療を行う能力を修得する. 同上 同上
先天異常 主な先天異常,染色体異常,奇形症候群,遺伝子異常のスクリーニングや診断を一般診療の中で行うために,それら疾患についての知識を有し,スクリーニング,遺伝医学的診断法,遺伝カウンセリングの基本的知識と技能を身につける. 同上 同上
先天代謝異常・代謝性疾患 主な先天代謝異常症の診断と治療を行うために,先天代謝異常症の概念と基本的な分類を理解し,新生児マス・スクリーニング陽性者には適切に対応し,一般診療の中で種々の症状・所見から先天代謝異常症を疑い,緊急を要する病態には迅速に対応し,適切なタイミングで専門医へ紹介する技能を身につける. 同上 同上
内分泌 内分泌疾患に対して適切な初期対応と長期管理を行うために,各種ホルモンの一般的概念,内分泌疾患の病態生理を理解し,スクリーニング検査や鑑別診断,緊急度に応じた治療を行うことのできる基本的能力を身につける. 同上 同上
生体防御
免疫
一般診療の中で免疫異常症を疑い,適切な診断と治療ができるために,各年齢における免疫能の特徴を理解し,免疫不全状態における感染症の診断,日常生活・学校生活へのアドバイスと配慮ができ,専門医に紹介できる能力を身につける. 同上 同上
膠原病リウマチ性疾患 主な膠原病・リウマチ性疾患について小児の診断基準に基づいた診断,標準的治療とその効果判定を行うために,系統的な身体診察,検査の選択,結果の解釈を身につけるとともに,小児リウマチの専門家との連携,整形外科・皮膚科・眼科・リハビリテーション科など多専門職とのチーム医療を行う能力を身につける. 同上 同上
アレルギー アレルギー反応の一連の仕組み,非即時型アレルギーの病態,IgE抗体を介した即時型アレルギーについて,アトピー素因を含めた病歴聴取,症状の推移の重要性を理解し,十分な臨床経験を積んで,検査・診断・治療法を修得する. 同上 同上 関連施設グループA
滋賀小児保健医療センター
感染症 主な小児期の感染症について,疫学,病原体の特徴,感染機構,病態,診断・治療法,予防法を理解し,病原体の同定,感染経路の追究,感染症サーベイランスを行うとともに,薬剤耐性菌の発生や院内感染予防を認識し,患者・家族および地域に対して適切な指導ができる能力を修得する. 同上 同上 関連施設グループA
呼吸器 小児の呼吸器疾患を適切に診断・治療するため,成長・発達にともなう呼吸器官の解剖学的特性や生理的変化,小児の身体所見の特徴を理解し,それらに基づいた診療を行い,急性呼吸不全患者には迅速な初期対応を,慢性呼吸不全患者には心理社会的側面にも配慮した対応能力を身につける. 同上 同上
消化器 小児の主な消化器疾患の病態と症候を理解し,病歴聴取・診察・検査により適切な診断・治療・予防を行い,必要に応じて外科等の専門家と連携し,緊急を要する消化器疾患に迅速に対応する能力を身につける. 同上 同上
循環器 主な小児の心血管系異常について,適切な病歴聴取と身体診察を行い,基本的な心電図・超音波検査結果を評価し,初期診断と重症度を把握し,必要に応じて専門家と連携し,救急疾患については迅速な治療対応を行う能力を身につける. 同上 同上 国立循環器病研究センター病院
血液 造血系の発生・発達,止血機構,血球と凝固因子・線溶系異常の発生機序,病態を理解し,小児の血液疾患の鑑別診断を行い,頻度の高い疾患については正しい治療を行う能力を修得する. 同上 同上
腫瘍 小児の悪性腫瘍の一般的特性,頻度の高い良性腫瘍を知り,初期診断法と治療の原則を理解するとともに,集学的治療の重要性を認識して,腫瘍性疾患の診断と治療を行う能力を修得する. 同上 同上
腎・泌尿器 頻度の高い腎・泌尿器疾患の診断ができ,適切な治療を行い.慢性疾患においては成長発達に配慮し,緊急を要する病態や難治性疾患には指導医や専門家の監督下で適切に対応する能力を修得する. 同上 同上
生殖器 専門家チーム(小児内分泌科医,小児外科医/泌尿器科医,形成外科医,小児精神科医/心理士,婦人科医,臨床遺伝医,新生児科医などから構成されるチーム)と連携し、心理的側面に配慮しつつ治療方針を決定する能力を修得する. 同上 同上
神経・筋 主な小児神経・筋疾患について,病歴聴取,年齢に応じた神経学的診察,精神運動発達および神経学的評価,脳波,神経放射線画像などの基本的検査を実施し,診断・治療計画を立案し,また複雑・難治な病態については,指導医や専門家の指導のもと,患者・家族との良好な人間関係の構築,維持に努め,適切な診療を行う能力を修得する. 同上 同上 滋賀小児保健医療センター

国立病院機構南京都病院
精神・行動・心身医学 小児の訴える身体症状の背景に心身医学的問題があることを認識し,出生前からの小児の発達と母子相互作用を理解し,主な小児精神疾患,心身症,精神発達の異常,親子関係の問題に対する適切な初期診断と対応を行い,必要に応じて専門家に紹介する能力を身につける. 同上 同上
救急 小児の救急疾患の特性を熟知し,バイタルサインを把握して年齢と重症度に応じた適切な救命・救急処置およびトリアージを行い,高次医療施設に転送すべきか否かとその時期を判断する能力を修得する. 同上 同上
思春期医学 思春期の子どものこころと体の特性を理解し,健康問題を抱える思春期の子どもと家族に対して,適切な判断・対応・治療・予防措置などの支援を行うとともに,関連する診療科・機関と連携して社会的支援を行う能力を身につける. 同上 同上
地域総合
小児医療
地域の一次・二次医療,健康増進,予防医療,育児支援などを総合的に担い,地域の各種社会資源・人的資源と連携し,地域全体の子どもを全人的・継続的に診て,小児の疾病の診療や成長発達,健康の支援者としての役割を果たす能力を修得する. 同上 同上 関連施設グループA

※研修目標は各施設で作成したもので構いませんが、日本小児科学会の到達目標に準拠してください。
※各領域の診療実績(病院における患者数)は申請書に記載覧があります。

地域医療の考え方 [整備基準:25, 26, 28, 29]

当プログラムは京都大学医学部附属病院・小児科を基幹施設とし、近畿一円を中心とした地域の小児医療を支えるものであり、地域医療に十分配慮したものです。
3年間の研修期間のうち、専攻医1−14は6〜12か月を専門研修連携施設B群もしくは関連施設グループA群において地域救急医療を含む地域医療全般を経験するようにプログラムされています。
またサブスペシャリティーに重点をおいた専攻医15は、地域医療を包含する中核病院において地域医療全般を経験出来るプログラムとなっています。
地域医療においては、小児科専門医の到達目標分野24「地域小児総合医療」(下記)を参照して、地域医療に関する能力を研鑽してください。


<地域小児総合医療の具体的到達目標>

  • 子どもの疾病・傷害の予防, 早期発見, 基本的な治療ができる.
    • ・子どもや養育者とのコミュニケーションを図り, 信頼関係を構築できる.
    • ・予防接種について, 養育者に接種計画, 効果, 副反応を説明し, 適切に実施する. 副反応・事故が生じた場合には適切に対処できる.
  • 子どもをとりまく家族・園・学校など環境の把握ができる.
  • 養育者の経済的・精神的な育児困難がないかを見極め, 虐待を念頭に置いた対応ができる.
  • 子どもや養育者から的確な情報収集ができる.
  • Common Diseaseの診断や治療, ホームケアについて本人と養育者に分かりやすく説明できる.
  • 重症度や緊急度を判断し,初期対応と, 適切な医療機関への紹介ができる.
  • 稀少疾患・専門性の高い疾患を想起し, 専門医へ紹介できる.
  • 乳幼児健康診査・育児相談を実施できる.
    • ・成長・発達障害, 視・聴覚異常, 行動異常, 虐待等を疑うことができる.
    • ・養育者の育児不安を受け止めることができる.
    • ・基本的な育児相談, 栄養指導, 生活指導ができる.
  • 地域の医療・保健・福祉・行政の専門職,スタッフとコミュニケーションをとり協働できる.
  • 地域の連携機関の概要を知り, 医療・保健・福祉・行政の専門職と連携し, 小児の育ちを支える適切な対応ができる.

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